英和:デ・カールの時計百科事典

本書を使うにあたって、あらかじめお読みください。

翻訳にあたり:

 本書英和:デ・カールの時計百科事典は、次の書籍を日本語に翻訳し、必要事項には適宜注釈を加えたものです。数箇所の誤植誤記も修正しました。

 De Carle, ” De Carle’s Watch & Clock Encyclopedia , 3rd edition 1983, reprinted with additions 1988, printed and bound in Great Britain by Anchor Brendon Ltd, Tiptree, Essex.

 原著で「英文語句を検索」して、必要な解説を「日本語で読む」辞書として編集しました。

 原著「デ・カールの時計百科事典」は、職業として、またさまざまな形で時計に関わる人々にとって重要な参考書として重宝されてきました。日本でも時計に関する語句の解説が、いろいろ公開されていますが、これらの中には、あきらかに原著を参考にしたと思われる説明が多々見られます。このことからも、現在でも重要な参考書として原著が利用されていることがわかります。

 時計に関する百科事典は他にもいくつか知られています。本書も、他の百科事典同様、時計に関する専門用語についての記載は当然充実しています。しかし、訳者は本書の存在意義が別にあると考えています。それは、 “科学としての” 時計学の用語に加えて、時計の理解、製作、修理、整備、保守その他に必要な、物理学、機械工学、電気工学、化学等に関する理論的解説、さらには天文学・歴史、その他周辺知識に関する項目も豊富に収録されていることです。もちろんこれらの語句は現在、個別にネット上で検索可能ですが、本書のように一括したデータとして掲載されているものは見つかりません。この点で、「デ・カール」は他に比して異彩を放っています。

 この事典の価値は他にもあります。原著では、総ページの3分の1強が、補足資料の記載に充てられており、その内容が日本では得ることが難しく、価値が高い情報、大変参考になる数値、項目、に満たされていることです。これらの各項目の内容は大変ユニークです、たとえば:

 さまざまな「数値表」、「針や、ケースなどのスタイル」、「部品の名称一覧」は、アンチーク時計の設計、部品製作、修理修復に有用でありましょうし、コレクターにとっては古い時計の収集の際に、対象とする時計の仕様あるいは説明を正しく理解するための、また古い昔の時計を鑑定、評価するための基礎知識として役立つと思います。さらには、「時計学年表」、「時計に使われる金属」、「大理石と装飾石」、「クロックケース用木材」、「ワークショップのヒント」などは、読み物としても面白いですし、想像以上の種類の金属材料、大理石、木材、などの存在を知ることは、何より時計愛好家の基礎知識、教養といっても良い、を豊富にすることに役立つでしょう。「教会のチャイム」などという一見時計と無関係と見える興味深いデータもあります。

 このように、本書の価値の過半はこの補足資料にあると言っても過言ではなく、この部分だけを取り上げて訳出することに意味があると思っています。

 本書を利用して、時計を愛する人々の時計に関する知識が、我が国において広く普及することを念願するものです。気に入っていただければ幸いです。

 令和7年(2025年)9月

古典時計協会 脇田 稔